銀行業界におけるTCPソケット通信テストの重要性と効率化

銀行業界におけるレガシーシステムのテスト自動化についてご紹介します。

はじめに

銀行業界では、オンラインバンキングやATMネットワーク、決済システムなど、多くのサービスでTCPソケット通信が利用されています。この通信は、信頼性の高いデータ送受信を可能にするため、銀行システムの基盤技術として不可欠です。しかし、レガシーシステムが未だに稼働している銀行業界では、通信テストの複雑化が課題となっています。

本記事では、TCPソケット通信の概要、銀行業界におけるテストの重要性、TCPソケット通信に対応するツールの現状、そして効率化を実現するParasoft SOAtest/Virtualizeの活用例について解説します

TCPソケット通信の概要

TCP(Transmission Control Protocol)は、信頼性を重視した通信プロトコルです。送信されたデータが正しい順序で受信されるように制御することで、データの順序や完全性を保証します。データの欠損やエラーが発生した場合には、再送処理を行うことで正確性を確保します。また、通信開始前に接続を確立するコネクション型通信を採用しており、安定したデータ転送を実現しています。

銀行業界におけるTCPソケット通信の主な利用例

  • ATMネットワーク
    ATM端末がホストシステムとリアルタイムで通信し、取引を処理。
  • 決済システム
    銀行間の資金移動や口座照会をサポート。
  • 国際送金(SWIFTネットワーク)
    高度に信頼性が求められるデータ交換。

TCPソケット通信の主な利用例

TCPソケット通信テストにおける課題

TCPソケット通信の信頼性と安全性の確保には、定期的なテストが欠かせません。しかし、テストにおける制約やレガシーシステムとの統合、膨大なテストケースの管理など、複雑で高度な技術が求められており、テスト工数も増大しています。

<テストにおける課題>
  • 複雑なテスト環境
    銀行システムは、内部システムだけでなく、多数の外部システムやサブシステムと連携しています。すべての環境を用意してテストを行うことは、時間とコストの面で大きな負担となります。
  • レガシーシステムとの統合
    多くの銀行では、依然としてレガシーシステムが稼働しており、新しい技術との統合が必要です。古いプロトコルやデータフォーマットとの互換性を検証するためのテストが不可欠です。
  • 負荷テストの難易度
    ピーク時のトラフィックを再現し、システムが高負荷に耐えられるかを検証する負荷テストは、専用のツールやリソースが必要で、実施が困難です。

TCPソケット通信に対応したツールの不足

TCPソケット通信を正確かつ効率的にテストするためには、専用のツールが必要です。 しかし、以下のような課題があります。

  1. 対応するテストツールが限定的
    多くのテストツールは、HTTP通信やREST APIのテストに特化しており、TCPソケット通信のようなプロトコルには対応していません。
  2. ツールの複雑さ
    一部のツールは対応しているものの、設定が複雑であり、専門知識を有していない場合には活用するのが難しいという課題があります。
  3. レガシーシステムとの互換性
    古いプロトコルやカスタム通信仕様に対応するツールが少ないため、銀行特有の要件を満たすことが困難な状況です。
このような背景から、TCPソケット通信に対応した包括的なテストツールの需要が高まっています。その中で注目されるのが、Parasoft SOAtest/Virtualizeです。

Parasoft SOAtest/Virtualizeの活用例

Parasoft SOAtest/Virtualizeは、TCPソケット通信のテストを効率化するツールです。以下の活用例を通じて、銀行業界の課題をどのように解決できるかをご紹介します。

仮想化でテスト環境を簡素化

テスト環境を仮想化することで、外部システムやレガシーシステムを模倣した仮想環境を構築し、物理的な環境を用意することなくテストを実行することが可能です。また、特定の通信条件やエラーパターンを仮想環境上で再現できるため、テスト環境の構築にかかる時間を大幅に短縮できます。さらに、テストに必要な依存関係を排除しながら効率的にシステム全体を検証することができ、負荷テストの環境としても利用可能です。これにより、より柔軟で効率的なテストプロセスを実現します。

自動化によるテストプロセスの効率化

繰り返し実行するテストケースを自動化することで、設定変更やバグ修正後の回帰テスト、またはパッチ適用時の無影響確認テストを効率的に実行することが可能です。また、継続的インテグレーション(CI)や継続的デプロイメント(CD)のパイプラインにこれらのテストを組み込むことで、開発プロセス全体のスピードアップを実現します。さらに、テストの実行結果をリアルタイムで確認できるため、問題箇所を即座に特定し、迅速な対応が可能になります。

負荷テストのシミュレーション

仮想サービスを活用することで、高トラフィック条件下での負荷テストを実施することが可能です。同時接続数や通信量を段階的に増加させることで、システムの応答時間やスループットを詳細に測定できます。これにより、ピーク時の負荷に耐えうるシステム設計の改善を促進し、信頼性の高いシステム構築に貢献します。

4つの主な電文タイプに対応

TCPソケットの電文にはさまざまな形式がありますが、Parasoft SOAtest/Virtualizeでは、代表的な4種類の電文タイプの送受信に対応しています。また、その他の電文についても対応できる場合があります。弊社にご相談いただければ、必要に応じて機能を拡張できる場合もあります。どうぞお気軽にお問い合わせください。

リクエスト/レスポンス電文の設定

TCPソケット電文は、各項目の内容が分かりにくいという特徴があります。テストを効率化するためには、各項目の設定ミスを減らしつつ、データのバリエーションを効率的に増やすことが重要です。Parasoft SOAtest/Virtualizeには、TCPソケット電文を項目ごとに分かりやすいツリー形式で表示できるビューが備わっているため、電文の設定やバリエーションの作成を簡単に行うことができます。ここでは[リクエスト]電文の設定画像で紹介していますが、レスポンス電文についても同様の要領で設定可能です。

リクエスト・レスポンス電文を項目ごとに分かりやすいツリー表記に変換

[入力モード]の切り替えで、TCPソケット電文をツリー表記に切り替え可能

リクエスト・レスポンス電文のバリエーション化

CSVやEXCELなどで用意したデータ列名とTCPソケット電文項目を自動マッピング

さまざまなTCPソケット通信方法に対応

テストクライアントやスタブにリクエストやレスポンス電文を設定した後は、[トランスポート]で送信方法を設定します。主な 4 種類の電文タイプに合わせて、適切な送信方法を指定します。

以下の 2 つのユースケースについても、同じように設定を行います。
  • テスト自動化のためのリクエスト電文の送信
  • スタブとしてのレスポンス電文の送信

先頭に電文長があり、16進数で設定された電文を送信する場合の例(一部の設定のみ抜粋)

レスポンス電文を自動検証

テスト自動化において重要なのは、送信したリクエストに対するレスポンスが期待通りの内容になっているかを検証する一連のプロセスを自動化することです。Parasoft SOAtest/Virtualizeを使用すれば、TCPソケット電文のレスポンスをXML形式に変換することができるため、項目ごとに詳細な検証が可能です。

レスポンスの自動検証と結果レビューの効率化
  • Diff機能による全体検証と、アサーター機能による部分検証の両方に対応しています。
  • Diff機能では、タイムスタンプのような動的な値を比較対象から除外する設定が可能です。
  • 期待値のメンテナンスも[回帰コントロールの更新]機能を使用することで自動更新・効率化できます。

スタブの応答条件を設定

Parasoft SOAtest/Virtualizeでは、TCPソケット通信のスタブを簡単に作成することができます。スタブは、リクエストに対して適切なレスポンスを返す必要がありますが、それをノーコードで直感的に設定することが可能です。リクエストとレスポンスを結びつける条件を「応答条件」と呼び、以下の2つの方法でノーコードで設定できます。※コーディングによる設定も可能です。

固定値を使用した応答条件

例:リクエスト電文の項目「メッセージタイプ」の値が「0100」と一致する場合に、対応するレスポンスを設定します。

データソースを使用した動的な応答条件

例:リクエスト電文の項目「メッセージタイプ」の値が、CSVやExcelで用意したデータソース内の項目「キー」と一 致する行をレスポンスとして関連付けます。

まとめ

TCPソケット通信は、銀行業界の重要なシステムを支える基盤技術であり、その信頼性を確保するためのテストは不可欠です。 しかし、レガシーシステムの統合や負荷テスト、セキュリティリスクへの対応は、従来の方法では多大な労力とコストがかかるという課題があります。

Parasoft SOAtest/Virtualizeは、仮想化と自動化を活用してこれらの課題を解決し、効率的かつ高品質なテストを実現します。 信頼性の高いシステムを構築し、ビジネスに貢献するため、SOAtest/Virtualizeの導入をぜひご検討ください。

APIのテスト自動化とサービス仮想化を1ツールで SOAtest/Virtualizeに
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