銀行系システムにおけるMQ通信テストの重要性と効率化

銀行業界におけるMQ通信でのテスト自動化についてご紹介します。

はじめに

銀行業界では、顧客資産を安全に管理し、高速かつ正確な取引を実現するため、高信頼性のシステムが不可欠です。その中核を担う「メッセージキュー(MQ)通信」は、システム間のデータ連携を支える重要な技術です。しかし、MQ通信を伴うテストには多くの課題があり、効率的に対応するためのツールや方法が求められています。本記事では、MQ通信テストの課題、効率化手法、そしてSOAtest/Virtualizeを活用した解決策についてご紹介します。

MQ通信の概要と銀行システムでの役割

MQ通信とは、非同期でメッセージを送受信する仕組みのことです。送信されたメッセージはキューに格納され、受信側が適切なタイミングで取得します。この仕組みにより、システム間の結合度を低減し、柔軟性やスケーラビリティを向上させるため、銀行業務では広く活用されています。

銀行業界におけるMQ通信の主な利用例

  • ATMやモバイルバンキングの取引
    送金や残高照会を、基幹システムにデータ送信。
  • 勘定系と情報系システムの統合
    取引履歴や顧客情報を、他システムと連携。
  • 外部サービスとのデータ交換
    クレジットカード会社や決済ゲートウェイとのリアルタイム通信。

MQ通信の主な利用例

MQ通信テストにおける課題

MQ通信の高信頼性や柔軟性、堅牢性の維持にはテストが不可欠です。しかし、テストにおける制約やレガシーシステムとの統合、膨大なテストケースの管理など、複雑で高度な技術が求められており、テスト工数も増大しています。

<テストにおける課題>
  • 非同期通信の複雑さ
    非同期通信では、送信と受信のタイミングが一致しないため、メッセージの順序保証やタイムアウト処理に課題が生じます。
  • 外部システム依存
    テスト環境で外部システムやAPIが利用できない場合、テストが中断または制限されることがあります。
  • レガシーシステムとの統合
    銀行業界では、COBOLやメインフレームを基盤としたレガシーシステムが依然として稼働しており、これらとの統合テストは容易ではありません。
  • 膨大なテストケースの管理
    エラー処理や例外シナリオを含む膨大なテストケースを効率的に管理し、網羅的に実施する必要があります。

上記の課題を解決できずにいると、エラー検出が遅れ、運用中の障害やコストが増加し、ビジネスへ悪影響を及ぼします。効率的なテスト環境の構築は、品質向上とリリースの迅速化が不可欠です。

MQ通信テストを効率化する方法

MQ通信テストを効率化するためには、SWIFT、XML、JSONといったメッセージを検証し、不正なデータを早期に発見することが重要です。メッセージの順序や遅延、タイムアウトなどをシミュレーションし、システムの安定性を確認する必要があります。また、外部システムやAPIを仮想化(スタブ・モック化)することで、テスト環境の制約を取り除き、スムーズなテスト実施が可能となります。実運用レベルのトラフィックを再現し、システムのパフォーマンスを測定・最適化する負荷テストも実行する必要があります。これらの手法を組み合わせたツールを活用すれば、さらなるMQ通信テストの効率化と品質向上を実現できます。

テストツールに関する実情

MQ通信は銀行業界をはじめとするミッションクリティカルなシステムで広く利用されていますが、それに対応したテストツールは数が限られています。特に、非同期通信や外部システム依存といったMQ通信特有の課題に対応できるツールは非常に少なく、従来のテストツールでは以下の課題を十分に解決できないケースが多くあります。
  • 非同期通信の再現
    メッセージ順序や遅延をシミュレーションできるツールが少ない。
  • 外部システムの仮想化
    実際の運用環境を模倣する仮想化技術(スタブ・モック化の技術)を持つツールが限られている。
  • 大量メッセージの負荷テスト
    高トラフィック環境を再現し、システムのパフォーマンスを検証する機能が不足。

こうした背景から、MQ通信に特化したツールの導入は、テストの効率化と品質向上を図るうえで欠かせません。

SOAtest/Virtualizeの活用例

APIテスト自動化/サービス仮想化ツール「SOAtest/Virtualize」は、MQ通信テストの課題を解決する機能が搭載されたツールです。このツールを活用することで、MQ通信特有の課題に対応し、効率的なテスト環境を構築できます。


リクエストメッセージ送信機能「SOAtest」の活用例

SOAtestは、メッセージ検証やエラーシナリオの再現、負荷テストの自動化に優れています。

  • メッセージの自動検証
    SWIFT, XMLやJSONなどのメッセージ検証を自動化し、不正なメッセージを早期に特定。
  • エラーシナリオのシミュレーション
    通信エラー、タイムアウト、リトライ処理といったシナリオを再現し、システムの堅牢性を確認。
  • 負荷テストの効率化
    実運用に近い負荷条件を再現し、システムのボトルネックを特定。

[トランスポート] タブでは、非同期通信、同期通信、キュー方式、パブリック/サブスクライブ方式、文字コードなど、さまざまな設定が可能です(下図参照)。

レスポンスメッセージ送信機能「Virtualize」の活用例

Virtualizeは、外部システムのスタブ・モック化や仮想環境の構築を容易にするツールです。

  • 外部システムの仮想化
    サードパーティAPIや内部システムを仮想化(スタブ・モック化)することで、外部依存を排除し、テスト中断を回避。
  • テストデータの柔軟な管理
    仮想サービスにさまざまなテストデータを設定し、多様なシナリオを再現。
  • レガシーシステムの負荷軽減
    実運用環境に影響を与えず、テストを安全に実施。

[トランスポート] タブ
では、スタブが待ち受けるリクエストメッセージのキュー、送信するレスポンスメッセージのキューなど、各種設定が可能です(下図参照)。

「SOAtest」と「Virtualize」の組み合わせ

SOAtestとVirtualizeを組み合わせることで、非同期通信や依存先環境を含む複雑なテストシナリオを包括的にカバーできます。

  • 包括的な非同期通信のテスト
    SOAtestでメッセージ検証を行い、Virtualizeで依存システムを仮想化(スタブ・モック化)することで、実運用に近い環境を再現。
  • 継続的テストの実現
    CI/CDパイプラインに統合し、頻繁なリリースに対応可能な継続的テストを構築。

まとめ

SOAtest/Virtualizeは、MQ通信テストに対応した機能を提供し、メッセージ検証や仮想化(スタブ・モック化)、負荷テストの効率化を実現します。これにより、テスト工数の削減、エラー検出率の向上、迅速なリリースの実現といった成果を得ることができます。

APIのテスト自動化とサービス仮想化を1ツールで SOAtest/Virtualizeに
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