いち早くEDRを導入したものの、イベント検知を超えた全体像の把握に課題

「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げてSaaS形式の会計・人事労務サービスを提供し、急成長を遂げているfreee。会計・給与や人事といった企業のバックオフィス業務を支え機微な情報を扱うサービスの性質上、セキュリティは不可欠な柱だ。
同社のCSIRTでセキュリティ業務を担当する大音慧明氏は、
「お客様から重要な情報が記された写真やデータを取り扱う処理もあり、一般的なSaaS企業に比べ、機微な情報を多く保有しています」と述べる。
そのミッションを担うCSIRTでは、freeeというプロダクトのセキュリティ品質を高めるPSIRTと連携しながら、社内のセキュリティ全般の統括や全社の教育・啓発にはじまり、社内ネットワークセキュリティの監視や端末のセキュリティ対策などに取り組んできた。動きの激しい業界であるゆえ、法令をはじめ同社を取り巻く環境は常に変化している。最新の動向を踏まえつつ、またビジネスのスピードに過度にブレーキをかけないようバランスを取りながら、セキュリティ対策に取り組んできた。
その中でもクライアント端末に関しては、従来型のアンチウイルス製品では巧妙化した攻撃を防ぐのは難しいと判断し、約7年前の時点でいち早くEDR製品を導入した。攻撃者が情報窃取などの目的を達成する過程で起こりうる「不審な動き」を早期に検出することで、クラウド上に構築された重要システムに侵入されるといった深刻な事態になる前に手を打ち、被害を最小限にとどめようと考えたからだ。
その後もIT環境はますます変化し、デバイスも進化を続けている。freeeもそうした進化に合わせてエンジニアに最新の環境を用意し、サービスを強化してきた。そこで問題になったのが既存のEDR製品だ。更新を間近に控えていたが、freeeで多くの従業員が利用しているM1チップ搭載のMac PCに対応できないことが判明したのだ。
さらに、
「以前のEDR製品では、問題が起きたこと自体は把握できても、その前後にどんなイベントが発生していたかも含めた一連の流れがわかりにくいという課題がありました」(大音氏)