医療DXとは?データ連携を加速させるHL7 FHIRとテスト戦略 Vol.1

医療システムにおいてデータ連携を加速させるHL7 FHIRとテスト戦略のベストプラクティスをご紹介する記事です。

はじめに

今後は医療DXの推進により、電子カルテのように医療データの電子化がさらに進むと考えられます。それに伴い、電子化された医療データを利活用して新たな価値を創出するための取り組みも拡大していくと予想されます。
ここでは、医療DXを推進する上で、システム間のデータ連携に欠かせないHL7 FHIRの概要とテスト時の課題についてご紹介しつつ、APIテスト自動化/サービス仮想化ツール「SOAtest/Virtualize」を用いたソリューションについてお届けします。

次のような方におすすめです。
  • HL7 FHIRでデータ連携する医療システムにおけるテスト手法をお探しの方
  • 今後、HL7 FHIRでデータ連携する医療システムの開発を予定している方

日本の医療情報分野を取り巻く現状と対策

健康・医療情報システムにおける現状の課題

昨今では、医療分野におけるデジタル化により、医療情報の連携の加速化や業務の効率化を実現するための取り組みが推進されています。例えば、従来の紙のカルテから電子カルテに移行することで、医療情報の管理を効率化することができ、また、外部の医療機関へ容易に情報を共有することも可能となります。さらに、別の医療システムや健康管理アプリケーションなどと連携し、医療データをさらに利活用するための取り組みである「医療DX(医療デジタルトランスフォーメーション)」も今後拡大していくと考えられます。
 
一方で、現状ではまだ医療分野におけるデジタル化が十分に浸透しているとは言えず、下記のような様々な課題が挙げられます。
  • 電子カルテの普及率が一般病院で46.7%、診療所で41.6%と依然として低い水準にある (平成29年度時点)
  • 患者自身が自らの意志で、自身の健康や治療状態を自由に把握できる環境が用意されていない
  • 患者情報がデジタル化されていないことで、医療機関を横串にした個人の診療・治療や健康管理、医療連携、政策決定、研究開発への活用が極めて限定的である 
このような現状もあり、昨今の新型コロナ危機において医療情報を十分に収集することができなかったとされています。
そのため、医療分野におけるデジタル化やデータの利活用を拡大することを目的とした、医療DXの推進が求められています。

医療DXを実現するための取り組み

医療データのデジタル化やデータの利活用が進んでいない現状ですが、今後は電子カルテの普及率を2026年までに80%、2030年までに100%とすることを厚生労働省は目標として掲げています。それに伴い、2022年3月には医療情報交換のフレームワークとして国際標準にもなりつつある「HL7 FHIR」を標準規格として認定し、「電子カルテ情報の標準化」も同時に推進しています。また、電子カルテでHL7 FHIRの利用を義務付けるなどの法整備や、HL7 FHIR準拠のクラウドベース電子カルテの開発に対する助成金の交付なども検討されており、本格的に医療DXの実現を目指すための取り組みが広がっています。
 
医療DXによって医療データの利活用が進むことで、下記のような効果が期待されます。
  • 患者自身が自らの医療情報へアクセスが可能になり、データに基づく健康・治療の維持が可能になる
  • 医療機関でより適切な治療の実施や、医療資源の適切な配置が可能になる
  • 創薬や治療法の開発を加速化できる
上記で述べたように、今後医療DXを進める上でシステム間のデータ連携時には、HL7 FHIRという規格の採用が必須になります。
次項では、HL7 FHIRについて詳しくご紹介いたします。


「出典:「医療DX 令和ビジョン2030」の提言、自由民主党政務調査会」
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/203565_1.pdf

医療DXの推進に活用されるHL7 FHIRとは?

FHIRとは「Fast Healthcare Interoperability Resources」の略称で、米国のHL7協会が開発した医療情報交換のための新しい標準規格(仕様)です。電子カルテなどの医療関連データを活用するための標準規格であり、2022年3月に厚生労働省より医療業界に対して、従来のHL7 V.2 に加えてFHIRも標準規格として推進を促す通達が発令されています。

FHIRを活用することのメリットは、現在の標準規格を活用しつつ、よりシームレスに健康・医療・介護に関するデータの連携を可能にする点にあります。これまでは、通信規格が異なることが原因でデータ連携が困難だったデバイスに対しても、FHIRにより接続を補完することでデータ連携を可能にします。従来は接続できなかったデバイスとのデータ連携を実現しつつ、医療データの利活用をさらに促進させることで、医療関係者だけでなく患者の方々にとっても利便性の高いサービスを提供することが可能となります。
また、HL7 FHIRは医療関連データの通信で利用される規格ですが、その実態としては、HTTP(S)でJSON やXML形式の電文で送受信する標準的なREST APIと同様の規格です。REST APIは一般的なWebアプリケーションで使用されている規格であり、業界を問わずにシステム連携するための標準規格として近年では利用が拡大しています。つまり、様々な医療システム間でデータ連携する際に、汎用的な技術であるREST API(HL7 FHIR)を利用することでデータ連携を加速させることが可能となります。

一方で、このようなデータ連携を伴う医療システムを開発する上で、適切なテストソリューションを選択する必要があります。特に医療システムにおいては、データの取り扱いにミスがあると人命に係わる場合もありますので、ソフトウェアの品質を十分に確保することが求められます。その反面、決まった開発スケジュール内でシステムをリリースする必要もありますので、誰しもテストには工数を掛けたくないと思うものです。このように、できるだけ工数を掛けずにテストを行いながらソフトウェアの品質も確保するという、相反する2つの観点を満たすテストソリューションが必要となります。

そこで本記事では、HL7 FHIR対応におけるテストフェーズで起こり得る課題を挙げつつ、工数を掛けずに十分なテストを行いソフトウェアの品質を確保するためのソリューションについてご紹介します。

まとめ

本記事では、医療DXを推進する上での現状と、今後のシステム間データ連携で採用が必須となるHL7 FHIRについてご紹介しました。次の記事では、HL7 FHIRを採用したシステムのテスト時の課題についてご紹介します。
APIテストまるわかりガイドダウンロード

APIのテスト自動化とサービス仮想化を1ツールで SOAtest/Virtualizeに
関するお問い合わせ

  • テクマトリックス株式会社
    東京本社

    ソフトウェアエンジニアリング事業部

    03-4405-7853

メールでのお問い合わせ
parasoft-info@techmatrix.co.jp

お問い合わせ

製品についてやテクマトリックスについてなど、
こちらよりお気軽にお問い合わせいただけます。