優れたポートフォリオ管理とヘッジのための秘訣

The Secret to Superior Portfolio Management and Hedging

FINCAD BLOG June 07, 2017

市場とリスクが目まぐるしく変動する世界では、従来のリスク計測手法は、もはや効果的がありません。「bumping」とも呼ばれ、広く用いられている有限差分法では、リスクを限られた視野からゆっくりと眺めることのみが可能です。過去数年間、主要クォンツチームの多くがリスク計算を最大千倍の速度で実行可能にする自動微分(AD)を実装してきたのはこの理由によります。
そうなると AD が何であるか、またそれがどこから出現したか知りたいと思われるでしょう。これは企業が複雑な価格算出や分析といった問題を迅速に解決する、数学的手法です。AD は金融の世界では最近ポピュラーになってきたばかりなのですが、海洋学、物理学、地質学、天文学、工学、その他様々な分野で過去数十年に渡り成功裏に応用されてきました。実のところ現在ではほとんどの業界が AD に移行しています(もしくはそうすべきです)。以下の3つがその主な理由です。

1. AD で取引前のリスク管理が可能になる

AD がもたらしたグリークスと感度計算の高速化や高精度化によって、エクスポージャーの管理はもはや一晩中かけて行う作業ではなく、取引前の作業となりました。Bump が必要となるような複雑なマルチアセットや、複数通貨のポートフォリオを担当するような、追い込まれているチームは、夜間の実行時間を減らすために、すべてのクォートをBumpさせないとか、パラレルシフト、ツイストやその他の一括BumpingなどによってカーブをまるごとBumpingするといった方法によって手を抜くことがしばしばあります。
もし企業にすべてのクォートを bump させる余裕がなければ、どれをbumpするかという危うい意思決定を迫られることになります。リスク管理の観点から言えばこれは暗くて危険な景観の中を小さな懐中電灯のみで動き回るようなものです。ADのおかげでポートフォリオの感応度を計算するクォートを選択する必要がなくなります。全てがはっきりと見て取れます。基本的に、小さな懐中電灯を投光器に変えれば、リスク景観の完璧な視点を得られます。中間値を含め、すべてのクォートに対する感応度はわずかなコストで提供されます。

2. AD でヘッジが改善される

ADはエクスポージャーに対する異なる視点を形成するためにリスクを再投影する際に役に立つので、ヘッジを改善するための非常に有益なツールです。リスクの再投影によって、ある金融商品の組み合わせから生じる感応度を、等価な感応度を持つ別の金融商品の組み合わせに変換できます。
ロングポジションのみで構成されるファンドを管理していて、金利エクスポージャーを管理したいが、権限上スワップのような不確実債務の使用が禁止されていることを想定してください。スワップ市場(Libor、OISなど)で取引されるような商品から構成されたモデルを使って金利エクスポージャーを計測できますが、本当に必要なのは実際に取引が許されている中期債に関してのエクスポージャー計算です。スワップの感応度から中期債イールドに対する感応度へ変換することにより、効果的な金利ヘッジを構築できます。
 
3. AD で有利な取引機会を捉える

目まぐるしく動く市場においては、利益を生むあらゆる機会に対して素早く行動を起こす能力が必要です。この領域においても、ADはポートフォリオ、トレーディングブック、ファンドのリアルタイム感応度計測を提供することで大いに役立ちます。感応度は ポートフォリオに対する 新たな取引のエクスポージャー のインパクトを 迅速に見積もるのに役立ち、それゆえ取引で素早く優位に立つことができます。
FINCAD は、Universal Algorithm Differentiation (UAD)®と呼ぶ自社の強力な AD の実装を、主力製品である F3 ソリューションへと統合しました。UAD はグリークス、ヘッジ係数、DV01、限界 xVAなどと言った感応度計算の比類なき速度を提供します。あらゆる評価モデルに、対象が単一の取引でもポートフォリオに対してであっても、あらゆる評価手法に対しても。
その結果としてより健全な市場リスク評価、資本の配置上の改善、および潜在的利益の増大に繫がります。これらはプロアクティブなヘッジとエクスポージャーの管理が強化されることを意味し、結果としてより堅牢な市場リスク管理、資本配賦の改善や潜在的利益の増加に繋がります。
 

 
ABOUT THE AUTHOR

Russell Goyder PhD
Director of Quantitative Research and Development, FINCAD

Russell Goyder, PhD, is the Director of Quantitative Research and Development at FINCAD. Before joining FINCAD’s quant team in 2006, he worked as a consultant at The MathWorks, solving a wide range of problems in various industries, particularly in the financial industry. In his current role, Russell manages FINCAD’s quant team and oversees the delivery of analytics functionality in FINCAD’s products, from initial research to the deployment of production code. Russell holds a PhD in Physics from the University of Cambridge. 

※本記事はFINCAD社の公式ブログの「The Secret to Superior Portfolio Management and Hedging」(2017/6/7)を翻訳したものになります。

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